Adobe Illustratorを使用して、文字と文字の間に生じる隙間を効率的に塗りつぶす方法について解説します。 多くの方がペンツールを使って手作業で塗りつぶしている様子を目にしますし、学生から便利な方法がないか質問が多いのも事実です。本記事では、Illustratorの便利な「アピアランス機能」を使って簡単に隙間を埋めるテクニックを紹介します。
文字組の悩みとアピアランスの力
文字と文字の間にできるわずかな隙間は、デザインの見た目や読みやすさに影響を与えることがあります。特に文字を太くしたり、縁をつけたりすると、その隙間が目立ちやすくなります。これまでの対処法としては、ペンツールなどを使って手作業で黒い塗り（ベタ）を作り、文字の後ろに配置する方法が一般的でしたが、このやり方は手間がかかり、文字を変更するたびに作業をやり直す必要があるなど、あまり効率的とはいえません。そこで今回は、Illustratorの「アピアランス」機能を使って、文字の隙間を自動的かつ非破壊的に埋める2つの方法を紹介します。この機能を活用すれば、あとからの修正も簡単になり、作業のスピードと柔軟性がぐんとアップします。
準備：アピアランスパネルの設定
まず、Illustratorの「アピアランス」パネルを開いておきましょう。メニューバーの「ウィンドウ」から「アピアランス」を選択すると表示されます。
デフォルトの塗りの設定
アピアランスパネルで文字の色を管理する際、デフォルトの文字の塗りの色が邪魔になることが多いため、文字そのものの塗りの色は「なし」に設定しておきます。
方法1：パスのオフセットと分割（最もシンプル）
この方法は、文字の背面に、文字の形状に合わせて少しだけ膨らませた色（例：黒）を配置し、その膨らんだ部分の隙間をパスファインダーの「分割」機能で埋める手法です。
- STEP.1新規塗りの追加と複製
アピアランスパネル下部の「新規塗り追加」ボタン❶をクリックし、最初の塗りを作成します（例：文字のメインカラーとなる薄い黄色）。
作成した塗りを複製❷し、複製した下の塗りの色を黒色に変更します。この時点では、黄色の塗りの下に黒い塗りがあるため、黒は隠れて見えません。
- STEP.2パスのオフセットの適用
黒い塗りが選択されていることを確認❸し、「新規効果を追加」ボタン❹をクリックします。「パス」カテゴリから「パスのオフセット」❺を選択します。
オフセット値を設定して、黒い塗りを文字の外側に適度に膨らませます。この時、角の形状を「ラウンド」❻に設定すると、文字の先端が丸くなり、より自然な見た目になります。
このオフセット値は、文字間の隙間が完全に埋まるように調整する必要があります。文字が離れすぎていると、オフセットしても黒い塗りが繋がらず、隙間が残ってしまうため、注意が必要です。この方法は、文字の縁を少し太めに作りたい場合に特に適しています
- STEP.3パスファインダー「分割」の適用
黒い塗りが選択された状態❼で、再度「新規効果を追加」ボタン❽をクリックします。「パスファインダー」カテゴリから「分割」を選択❾します。
パスのオフセットの下に「分割」が追加されたら、その「分割」をクリック❿してパスファインダーオプションを開きます。
ここで、「分割およびアウトライン適用時に塗りのないアートワークを削除」のチェックを外します⓫。この設定により、文字間の隙間が綺麗に埋まります。
方法2：線と複数のパスファインダー効果
この方法は、文字の背面に太い線を配置し、それをアウトライン化、分割、合体という複数の工程で処理することで隙間を埋めます。少し工程は増えますが、より柔軟な表現が可能です。
- STEP.1新規塗りと線の追加
「新規塗り追加」ボタン❶でメインの塗りを作成します（例：金色）。
線を適当な太さに設定❷します（例：黒色）。
- STEP.2線と塗りの順序の入れ替え
線が塗りよりも上に配置されていると、線が塗りを隠してしまうため、アピアランスパネルで線を塗りの下にドラッグして移動❸させます。
- STEP.3線の設定（丸型先端とラウンド結合）
追加した線をクリックして詳細オプションを開きます。「先端」を「丸型先端」❹に、「角の形状」を「ラウンド結合」❺に設定します。これにより、線の角が丸くなり、見た目が美しくなります。
- STEP.4パスファインダー効果の適用（アウトライン、分割、合体）
線が選択された状態❻で「新規効果を追加」ボタン❼をクリックし、以下の順で効果を適用します。
- 「パス」>「パスのアウトライン」：線をアウトライン化します。
- 「パスファインダー」>「分割」：文字が重なる部分を分割します。
- 「パスファインダー」>「合体」：分割された部分を合体させ、隙間を埋めます。
【効果の適用順序が重要】
アピアランスパネルで、「パスのアウトライン」→「分割」→「合体」の順になるように、各効果をドラッグして並べ替えます。この正しい順序にすることで、隙間が完全に埋まります。
応用編：グループ化された文字への適用
上記のテクニックは、一つの連続したテキストだけでなく、複数の文字オブジェクトやグループ化されたテキストにも適用できます。
- STEP.1複数の文字（オブジェクト）をグループ化する
複数の文字オブジェクトを選択し、まずグループ化（⌘（Ctrl） + G）します。
- STEP.2上記で紹介した2つの方法を適用する
その後は、上記で説明した「パスのオフセットを使ったアプローチ」または「線を使ったアプローチ」の手順と全く同じです。グループ化された文字全体に対して隙間が埋まるようになります。
方法1：パスのオフセットと分割
方法2：線と複数のパスファインダー効果
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まとめ
Illustratorのアピアランス機能を使えば、文字の隙間を自動的に埋めつつ、元の文字そのものには手を加えずに見た目だけを調整することができます。これにより、デザインの完成度を高めながらも、あとから文字内容やスタイルを簡単に変更できる柔軟さが保たれます。こうしたテクニックは文字だけでなく、さまざまなオブジェクト同士の隙間を整える場面にも応用可能です。日々のデザイン作業をより効率的に、スマートに進めるためにも、ぜひ取り入れてみてください。
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